地域金融市場における集中度や金融機関合併が企業の資金調達に及ぼす影響

本稿では、金融機関店舗レベルの貸出額情報に基づいて計算される都道府県単位のハーフィンダール・ハーシュマンインデックス（HHI）に基づいて、2000年代半ばから最近に至るまでの、貸出市場における集中度と企業の借入金利との対応関係を検証する。その結果、集中度が高いと企業の借入金利が高まるという一定の傾向がみられる一方で、金融機関合併に起因する集中度の上昇は、企業の借入金利に有意な影響をもたらさない。次に、金融機関合併が企業の資金調達環境に及ぼす影響が、同一都道府県内における合併行との取引関係の有無によって異なる可能性を検証した。2004年以降の金融機関合併を網羅してその効果をみると、合併行と取引関係にあった企業における借入金利は平均的には高まるのではなく低下している。特に後半期の金融機関合併では、借入金比率の上昇幅が大きくなる傾向があり、合併金融機関が自らの経営基盤の強化を図るために貸出を積極的に行っている可能性を示している。