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Abstract
1) 本稿では、個人住民税において配偶者控除を見直す場合の増減税効果、および所得税と個人住民税の双方において配偶者控除を同時に見直す場合の増減税効果、の2 つを推計した。本稿は所得税のみの見直しを考察した高山・白石(2016)の続編である。2) 利用したデータは『国民生活基礎調査』(2013 年実施)であり、2012 年分の所得データを使用した。個人住民税は2013 年の制度を前提とした。ただし、その均等割部分は等閑視した。制度見直しに当たって、全体として増減税同額(税収中立)になるように配慮した。3) 高山・白石(2016)では、専業主婦を「収入を伴う仕事をしていない家事専業の妻」と定義していた。本稿では、その定義を最狭義に変更し、夫が被用者であり、かつ「収入を伴う仕事をしていない家事専業の妻」に限定した。ただし、参考計数として高山・白石(2016)と同じ定義をした専業主婦の場合についても推計結果を掲載している。4) 個人住民税を単独で見直す場合の主要な推計結果は次のとおりである。① 配偶者控除(配偶者特別控除を含む。以下、同様)を廃止すると、年間6600 億円の税収増となる。全体として61%の世帯で税負担の増減はない。税負担が増えるのは39%の世帯であり、妻が専業主婦の世帯ないし非正規で就業している共働き世帯がその中核を占めている。税負担増は平均で年間3 万2000 円であり、世帯年収が高くなっても、この金額はほとんど変わらない。② 33 万円の配偶者控除を廃止し、同額の夫婦控除(所得控除方式:世帯年収600 万円までの所得制限つき)を導入すると、全体として15%の世帯が負担増、12%の世帯が負担減となる。負担増が負担減を世帯数で上回っており、所得税の見直し結果とは逆である。負担増が相対的に多いのは、世帯年収600 万円以上の専業主婦世帯、および妻が非正規で就業している世帯年収700 万円以上の世帯である一方、妻が正規で就業している共働き世帯では負担減組が多数派となる。③ 配偶者控除を廃止し、3 万3000 円の夫婦税額控除(世帯年収600 万円までの所得制限つき)に移行しても、その効果は上記②で述べた所得控除方式の夫婦控除を導入したときと、全く変わらない。個人住民税が10%の比例税だからである。④ 個人住民税が累進税率を採用していれば、夫婦税額控除への移行で負担減組の方を負担増組よりも多くすることができる。⑤ 2017 年度税制改正案は所得税と同様、パート主婦特権を中間所得層に限って拡大・強化する性格を有している。5) 所得税と個人住民税を同時に見直す場合の主要な推計結果は以下のとおりである。① 所得控除方式の夫婦控除(所得税38 万円、個人住民税33 万円)に世帯年収制限(所得税800 万円、個人住民税600 万円)つきで移行する場合、税負担減となる世帯は15%、税負担増世帯14%となり、前者の方が後者より若干ながら多い。さらに、世帯年収400 万円以上2700 万円未満の中間所得層では減税組が増税組を世帯数で圧倒する一方、年収700 万円以上では逆に増税組の方が多くなる。また専業主婦世帯では増税組が減税組よりも多い一方、妻が正規または非正規で就業している世帯では総じて減税組の方が増税組よりも多い。② 夫婦税額控除(所得税3 万8000 円、個人住民税3 万3000 円)に世帯年収制限(所得税670 万円、個人住民税600 万円)つきで移行する場合においても、減税組(30%)が増税組(12%)を世帯数で圧倒する。この点は妻の働き方が違っても、質的に変わりがない。また、世帯年収100 万円以上700 万円未満の中低所得層では減税組の方が増税組より多い。所得税のみを見直す場合と同様に、所得税・個人住民税の双方を同時に見直す場合においても、「負担増=多数派」説「中間所得層=負担増」説は、いずれも事実に反していることが確認された。
Suggested Citation
高山, 憲之 & 白石, 浩介, 2017.
"配偶者控除見直しに関するマイクロシミュレーション(Ⅱ),"
CIS Discussion paper series
659, Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University.
Handle:
RePEc:hit:cisdps:659
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